先生の探究授業ラボ 生徒が自分の問いを見つける15分授業 教材 v1.1 2026年10月19日 中学校を基準にした授業案。15分は探究の入口です。調査・分析・まとめは、続く授業で行います。 ねらい 自分の気になることを言葉や絵で表し、問いを仮置きして、次に確かめる手がかりを考える。問いが決まらない場合も、その状態と次の小さな行動を残す。 準備 生徒用A4ワークシート1枚、筆記具、時計。身近な物や短い体験も用意。端末・生成AIは不要。個人で考える時間と、共有する範囲を本人が選ぶ機会を設ける。 はじめに 2分 声かけ:今日あったことを、一つ思い出してみよう。休み時間や、いつも使う物のことでもいいよ。一言や絵から始めよう。 進行:経験やつぶやきを受け止める。日常の一場面から始め、空欄や保留も認める。 気になること 3分 声かけ:今日の休み時間、何をしてた? そこから、覚えていることを一つ書いてみよう。別の場面でもいいよ。 進行:したこと・使った物・好きなことも入口にする。身近な具体物を見る、触る方法も用意。 問いかけを試す 5分 声かけ:どんなことがあったの? 話せるところから聞かせて。 進行:短い返事や沈黙を受け止め、次の一言か待つ時間を選ぶ。2枚目の例を参照。 問いを仮置き 3分 声かけ:話したことや見た物で、もう少し知りたいことはある? あれば、自分の言葉で書いてみよう。まだなら、覚えておきたいことだけでもいいよ。 進行:本人が確かめたいことを選ぶ。言葉や絵だけで残してもよい。次時に具体物や体験へつなぐ。 次の一歩・振り返り 2分 声かけ:次に、見たり、聞いたり、試したりしたいことはある? まだ決まらなければ、そのまま残そう。今日、覚えておきたいことは何? 進行:例:「次に消しゴムを使うとき、跡を見ておく」。まだ決まらなければ次に相談する時間をつくる。 声かけの分岐(創作例) 「何を書けばいい?」 場面:授業の始め。先生が「気になることを書こう」と伝えたあと、ワークシートが空欄のままの生徒がいる。 生徒:えー、別にない。何書けばいいの? 今日の休み時間、何してた? 声かけの意図:思い出す範囲を、今日の休み時間に絞る声かけです。まず何をしていたかを聞き、本人が話したことを手がかりにします。 ひとこと返す・手を動かす:「友達としゃべってた。」 先生の次のひとこと:どんな話をしてたの? 話せることだけでいいよ。 支え方:まず話題を一つ聞きます。「しゃべっていた」という一言から、すぐに問題や調査テーマを求める必要はありません。 黙る・戸惑う:(紙を見たまま、返事をしない。) 先生の次のひとこと:少し考える時間にしようか。また来るね。 支え方:返事のない理由は、まだ分かりません。少し離れて時間を取り、あとで様子を確かめます。視線だけで意欲を判断しません。 別の話や希望が出る:「忘れた。昨日の部活なら覚えてる。」 先生の次のひとこと:昨日の部活で、何してた? 支え方:本人が思い出した場面を聞きます。休み時間という教師の枠へ戻すことより、話したい場面を受け止めます。 このごろ、つい見たり、やったりするものはある? 声かけの意図:好きなものや繰り返す行動も入口になります。遊びの話を、すぐ学習用の立派な理由へ言い換えずに聞きます。 ひとこと返す・手を動かす:「ゲーム。ゲームでもいいの?」 先生の次のひとこと:うん。どんなときが楽しい? 支え方:まず好きなことを受け止めます。問いが出てきたら、本人の関心と学校の学習目標を照らし、扱い方を一緒に考えます。 黙る・戸惑う:「あるけど、言いたくない。」 先生の次のひとこと:話せる範囲でいいよ。自分の紙にだけ書いておく? 支え方:話したくない内容の説明を求めず、共有しない選択も残します。教師の例から考える方法も用意します。 別の話や希望が出る:「動画。次のが出てくると見ちゃう。」 先生の次のひとこと:どんな動画だと、つい見ちゃう? 支え方:本人が挙げた行動をもう少し聞きます。この段階で依存などの問題名を当てはめず、気になる部分があるかを一緒に探します。 机の上で目に入った物を、一つ教えて。指で示してもいいよ。 声かけの意図:具体物を見る・触れる・指すことから始めます。指したことだけで関心の強さは決めず、本人の様子を確かめます。 ひとこと返す・手を動かす:(消しゴムを指さす。)「消しゴム。」 先生の次のひとこと:それ、使い心地はどう? 支え方:指した物について、日頃の使い方や感覚を聞きます。すぐに疑問文を作らせず、触ったり試したりする時間も取ります。 黙る・戸惑う:「別に、何も。」 先生の次のひとこと:分かった。少し見ておく時間にしよう。また来るね。 支え方:この入口が合わない場合もあります。空欄のまま保留し、次の時間に具体物や短い体験に出合う機会を用意します。 別の話や希望が出る:(筆箱についたキーホルダーを持つ。)「これ、友達にもらった。」 先生の次のひとこと:そうなんだ。気に入っているところ、ある? 支え方:物の機能以外に、大切にしている理由へ関心が向くこともあります。相手の名前や私的な事情の共有は求めません。 「調べた。これでいい?」 場面:ノートを消したとき、黒い跡が残った。消しゴムについて調べた生徒が、見つけた説明をワークシートに写している。 生徒:消しゴムのこと、調べて書いた。これでいい? 調べる前、ノートを消したとき、どうなったんだっけ? 声かけの意図:調べたきっかけの出来事に戻る声かけです。調べた行動を受け止め、本人が見たことと資料の説明を少しずつつなぎます。 ひとこと返す・手を動かす:「黒くなった。」 先生の次のひとこと:その跡、まだ残ってる? 支え方:残っていれば一緒に見ます。黒くなった理由を先に教えるより、どんな跡なのかを本人と確かめる入口にします。 黙る・戸惑う:「うーん、忘れた。」 先生の次のひとこと:今のノートを見てみようか。思い出さなくても大丈夫。 支え方:記憶を無理に引き出さず、見られる物へ戻ります。今は保留し、次に使うときに見ておく方法もあります。 別の話や希望が出る:「それより、紙が破れるほうが嫌。」 先生の次のひとこと:破れたところ、見せてもらってもいい? 支え方:関心の移動を受け止めます。黒い跡を調べ続ける前提にせず、本人が気になる場面を確かめます。 調べたところ、いっしょに見せてもらっていい? 声かけの意図:生徒が見ている資料を一緒に読みます。説明できるはずだと構えず、言葉や図のどこで立ち止まるかを見ます。 ひとこと返す・手を動かす:「ここ。「摩擦」って書いてある。」 先生の次のひとこと:その言葉、どんな意味か分かる? 一緒に読んでみようか。 支え方:指した言葉から読みます。教師が短い説明や図を用意し、本人が使った消しゴムと結びつけて確かめる手助けをします。 黙る・戸惑う:「さっき閉じちゃった。」 先生の次のひとこと:履歴から探すのを手伝おうか。今はメモを見てもいいよ。 支え方:資料に戻る操作自体が難しい場合もあります。探し方を具体的に支え、情報源を残す方法は一緒に練習します。 別の話や希望が出る:「もう書いたし、これで終わりにしたい。」 先生の次のひとこと:今日はここまでにしよう。次の時間、このメモから始められるよ。 支え方:学習の区切りを伝えます。次時に具体物や資料を見る機会をつくり、何を確かめるかは改めて相談します。 手元の消しゴムで、気になるところを試してみる? 声かけの意図:本人の経験を、小さな観察へつなぐ提案です。試すかどうかを選べるようにし、観察から新しく気づく時間を取ります。 ひとこと返す・手を動かす:(ノートの端の鉛筆の線を消してみる。) 先生の次のひとこと:消したところ、どうなった? 支え方:まず起きたことを一緒に見ます。違いに気づいたら、何を変えて比べるかを次の時間に相談します。 黙る・戸惑う:「何すればいいの?」 先生の次のひとこと:さっきと同じように消すところ、一緒に見てもいい? 支え方:広い指示を、できる動作一つにします。試したあとに何か気になったかを聞き、教師が問いを決めないようにします。 別の話や希望が出る:「友達のやつ、よく消えるんだよ。」 先生の次のひとこと:借りて確かめたい? 今日は話だけにする? 支え方:本人が挙げた違いを受け止めます。借りるときは相手の了承を得て、同じ紙・線など比べ方を一緒に整えます。 「AIの文、写せばいい?」 場面:「宿題の途中でスマホを見る」ことから、教材のAI説明例を読んでいる場面。下の文は確かめ方を考えるための架空の説明で、内容は未検証。実際にAIを利用する必要はない。 教材用の架空のAI説明文:スマートフォンを見るのは、通知が気になるからです。 生徒:AIに聞いたら出てきた。これ、そのまま書けばいい? この文、自分のときと同じ感じ? 声かけの意図:自分が経験した場面と説明を比べる声かけです。本人に合わない説明があれば、そこから確かめ直します。 ひとこと返す・手を動かす:「通知なくても見ちゃうけど。」 先生の次のひとこと:通知がないときは、どんなときに見てる? 支え方:その一言を受け止め、具体的な場面を聞きます。本人の経験一つから、ほかの人にも同じだとは決めつけません。 黙る・戸惑う:「…分かんない。」 先生の次のひとこと:自分にもありそうなところに、線を引いてみる? 今は読むだけでもいいよ。 支え方:答える範囲を小さくします。言葉が出ないときは少し待ち、保留して次に確かめる方法も選べるようにします。 別の話や希望が出る:「それより、宿題を早く終わらせたい。」 先生の次のひとこと:終わらせたいんだね。宿題のどのあたりで止まりやすい? 支え方:本人が困っている場面を聞きます。スマホの話を続ける前提にせず、何を知りたいのかをもう一度一緒に探します。 この文で、自分でも分かるところはある? 声かけの意図:理解している言葉を手がかりに、一文ずつ読みます。全文をすぐ自分の言葉に直せることを前提にしません。 ひとこと返す・手を動かす:「「通知が来る」は分かる。」 先生の次のひとこと:通知が来たとき、自分はどうしてる? 支え方:分かる言葉を日常の動きへつなぎます。そこから先の説明は、資料や観察で確かめる必要があります。 黙る・戸惑う:「読んでない。出てきたから。」 先生の次のひとこと:最初の一文だけ、一緒に見てみようか。 支え方:まず読むところから始めます。理解できない箇所は印を付け、調べたり質問したりできる状態をつくります。 別の話や希望が出る:「AIの答えって、間違うの?」 先生の次のひとこと:違うこともあるよ。この文は、自分のときにも当てはまるかな。 支え方:AIの説明には確認が必要だと伝えます。自分の経験だけで全体の正しさを判断せず、教師が用意した資料とも比べます。 この文には、何を調べてそう言ったか、書いてある? 声かけの意図:根拠の場所を一緒に探す声かけです。最初から一人で出典を探せると想定せず、見方を具体的に示します。 ひとこと返す・手を動かす:「書いてない。」 先生の次のひとこと:根拠はまだ分からないね。資料を一つ、一緒に見ようか。 支え方:根拠が確認できない状態として残します。出典がないだけで真偽を決めず、学校で用意した資料と照らします。 黙る・戸惑う:「どこ見ればいいの?」 先生の次のひとこと:この一文の周りを一緒に見よう。元の資料の名前はあるかな。 支え方:探す位置を示します。資料名があっても、それが実在し、書かれた内容と合うかを教師と確認します。 別の話や希望が出る:「別に、理由までは知りたくない。」 先生の次のひとこと:そうなんだね。今日は気になったことだけ残しておこうか。 支え方:関心の向かない理由を問い詰めず、次に扱う内容を相談します。提出する文章に使う場合の根拠や引用の確認は、学校のルールに沿って別に支えます。 観察 知識・技能:見たこと・調べたことと、予想や未確認のことを区別しようとしているか。 思考・判断・表現:気になる理由や、確かめたいことを自分なりの方法で表しているか。 主体的に学習に取り組む態度:手がかりを選び直す、必要な助けを求めるなど、学びを調整する過程が見られるか。 発言の多さ、問いの完成度だけで内面を点数化しない。沈黙・保留も含めて過程を記録し、学校の評価規準に照らして見取る。 4領域との関係 人間関係形成・社会形成能力:対話で相手の考えを聴き、自分の考えを伝える場面。 自己理解・自己管理能力:気になることに気づき、取り組み方を自分で選ぶ場面。 課題対応能力:事実と未確認のことを分け、問いや確かめ方を考える場面。 キャリアプランニング能力:この学びが自分の今後の学習や生き方にどうつながるかを振り返る場面で扱う。15分で4領域すべての育成を達成したとは判断しない。 学年調整 小学校高学年:書く量を減らし、絵や口頭も選べるようにする。身近な具体物から始める。 高校:自分との関わり、情報源の信頼性、調査の条件を問い返す。問いの範囲は本人と相談する。 安全 実在の生徒の氏名・学校名・家庭・健康・成績等の情報はサイトに入力しない。屋外観察・人への聞き取り・実験は、先生が場所や方法の安全を確認してから。個人的な経験の共有を求めない。AIなしで実施できる授業案。 利用条件 学校の授業・校内研修での複製・配付・編集は無償。編集時は出典・版・変更箇所を残す。学校外への再配布・商用利用は事前に相談。教育効果・実授業での再現性は未検証。文部科学省の監修・認定教材ではありません。 出典 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編(第6章第3節・pp.96-97) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_012.pdf 中学校・高等学校キャリア教育の手引き(2023年3月) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/mext_00010.html 学校現場における生成AIの利用について(Ver.2.0掲載) https://www.mext.go.jp/zyoukatsu/ai/